【結果】2019年3月「元禄忠臣蔵」「積恋雪関扉」国立劇場賞

○優秀賞
中村梅枝
(「積恋雪関扉」の小野小町姫および傾城墨染実ハ小町桜の精の演技に対して)

 

○優秀賞
中村歌昇
(「元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿」の富森助右衛門の演技に対して)

 

 

*優秀賞が二つでて、何より。

*辛口の劇評も見られたが、これらの演目で若手の初役であれば、相当いい出来ではないか。

 演劇に限らずどのジャンルでも、最初から上手くいくなどといくことはない。若いうちに大役を得る機会が少ない歌舞伎なら尚のこと。今回の「挑戦する小劇場歌舞伎」が今後も若手を育てる場になるといい。

 歌舞伎座での「花形歌舞伎」が少なくなってきた今、3月だけでなく、10月・11月も「挑戦する小劇場歌舞伎」でも良い位である。

(そして、大劇場では6・7月だけでなく、10月・11月も歌舞伎鑑賞教室をすれば尚良いであろう)

 

 

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2018年3月国立劇場 劇評3紙読み比べ

国立劇場3月歌舞伎公演

「増補忠臣蔵ー本蔵下屋敷−」「梅雨小袖昔八丈ー髪結新三−」

 

3月19日 朝日新聞 菊之助の新三 熟成が楽しみ 児玉竜一氏

 

3月20日 読売新聞 遊び人の背伸び 実在感   大矢芳弘氏

3月26日 毎日新聞 小悪党さっそうと      小玉祥子氏

 

 

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蟹とホトトギス 「梅雨小袖昔八丈ー髪結新三ー」

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国立劇場賞の奨励賞(山崎咲十郎:「梅雨小袖昔八丈」の肴売新吉)をきっかけに、初鰹の場面のことを少し回顧。

 

新三は初鰹の代金のお釣りを受け取らず、「ナニ釣りにゃ及ばねえ。蟹の活きのいいのがあったら持ってきてくんな」と言うのだが、江戸で初夏に蟹・・・?と引っかかっていた。(黙阿弥は、特に蟹とは書いていなかったようである)

 

調べてみると、古くは万葉集や古事記にも食用蟹は登場しており、時代が下ってからは塩漬けにするなどして遠方へも運ばれ、また江戸〜明治期は現代に比して豊漁だったとのこと。

また、食用蟹の産地は広く種類も多い。それぞれ旬の時期が異なるから、新三が蟹を食べてもおかしくはなかったのだろう。

(過去の映像を観ると、国立劇場第42回歌舞伎公演(昭和46(1971)年 6月)の二代目松緑は「蟹」と言っている。)

 

しかし、国立劇場第148回歌舞伎公演(昭和63(1988)年4月)では、当時の勘九郎が「蝦蛄(シャコ)でもへえったら持ってこい」と言っている。いかにも江戸前の食べ物というイメージでしっくりくる。もちろん季節もあっている(蝦蛄の旬は春と秋)。

※なお、この場面は「文化デジタルライブラリー」(日本芸術文化振興会)舞台芸術教材「黙阿弥」内に映像がアップされており、二代目又五郎の家主との掛け合いも観ることができる。

 

そして、今回の国立に限ったことではないが、この場面の重要な音、ホトトギスの鳴き声、肴売の「鰹、鰹」の声がどうにもしっくりこないことが多くある。

上記の昭和46年の映像を観て、やっぱり、と思った。近年のものとは雲泥の差である。

ホトトギスの笛を担当するかた、肴売を演じるかたは、なるべく昔の映像記録を観て、江戸の空気を纏っていただきたい。