2018年3月国立劇場 劇評3紙読み比べ

国立劇場3月歌舞伎公演

「増補忠臣蔵ー本蔵下屋敷−」「梅雨小袖昔八丈ー髪結新三−」

 

3月19日 朝日新聞 菊之助の新三 熟成が楽しみ 児玉竜一氏

 

3月20日 読売新聞 遊び人の背伸び 実在感   大矢芳弘氏

3月26日 毎日新聞 小悪党さっそうと      小玉祥子氏

 

 

【増補忠臣蔵】

名作とは言いがたい作品なので、どのように評されるか注目していたが、大矢氏は100字余りの短い評。

児玉氏・小玉氏は成り立ちと粗筋を紹介。児玉氏は更に、鴈治郎家の芸の継承への期待を述べた。

桃井若狭之助(鴈治郎)については、

「鴈治郎がこれを、古くさい芝居として突き放すことなく親身に向き合う姿勢はいい」(児玉氏)

「中村鴈治郎の桃井若狭之助が鷹揚な上方の芸風を活かし」(大矢氏)

「鴈治郎の明るくおおらかな芸風が役に合う」(小玉氏)

若狭之助以外の役についての評は「亀蔵が死を覚悟しての忠義ぶりを明晰なセリフで聞かせた。橘太郎、梅枝がいい」(小玉氏)のみ。

 

【梅雨小袖昔八丈】

まず新三(菊之助)について、

「ピュアな持ち味が序幕や大詰にいきて、生真面目な伝承による初役が実現した。髪結い仕事や、(少しカットがあるが)地獄の言い立ては鮮やかにこなした」(児玉氏)

「殻を破って役柄を広げようと意気込む菊之助の新三には、駆け出しの遊び人が悪党たらんと精一杯背伸びしている実在感がある。男盛りの精彩に満ちて、(中略)スタイリッシュに衣裳を着こなして心持ちを変化させていく」(大矢氏)

「菊之助の新三は時代と世話の使い分けがきき、売り出しをはかる小悪党らしいさっそうぶりと抜け目のなさを感じさせる」(小玉氏)と、三氏とも颯爽・鮮烈といった印象。

注文は、

「一方で、目はよく利くのだが、悪の匂いが少々希薄であるのは否めない。年齢を重ねることで、無頼な色気が滲み、さらに踏み込んだ緻密さが深まるのを楽しみにしたい」(児玉氏)

「菊之助の役づくりは潔癖な余り、新三の愚かさまでは描ききれていないが、父の尾上菊五郎が51歳で初演し、滑稽味を膨らませて当たり役にしたことを思えば、40歳の菊之助にはまだ伸びしろがある」(大矢氏)。

 

新三以外の役も概ね好評。三氏が揃って挙げたのが手代忠七(梅枝)。

「周囲も初役が多いが、中では中村梅枝の忠七が出色。年は若いが大人びた芸質で、いかにも周囲の目を盗んで主家の娘と通じていそうな雰囲気をかもし出す」(児玉氏)

「中村梅枝の手代忠七がおっとりした優男を好演し」(大矢氏)※記事の写真は忠七が髪を撫で付けられているところ

「梅枝の忠七が、主人の娘であるお熊に好かれるのもわかる二枚目ぶりで、新三に翻弄される情けなさと困惑をうまく表現」(小玉氏)

菊之助・寺嶋和史の親子共演が公演の話題の一つであったが、触れたのは小玉氏「寺嶋和史の丁稚が愛らしい」のみ。

 

 

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